かたまりのお肉を使った美味しい煮込み料理の作り方
今日は美味しい煮こみ料理の作り方を紹介します。
作り方と言っても牛肉の赤ワイン煮込みのレシピを紹介という感じではなくて、全ての煮込み料理における作り方の基本の紹介です。
お肉の煮込み料理ってなんだか難しそうだし、手が込んで大変そう。頑張って作ったけど固くてパサパサして美味しくない。
なんでお店で食べると美味しいのに自分で作るとイマイチなんだろう。みたいに思った事ありませんか?
そんな風に思ったように作れない原因はきちんとした煮込み料理の作り方を知らない事がほとんどです。
ですのでこれを覚えればあなたも煮込み料理が確実に上手になります。
という事で今回は狙った仕上がりを再現できるお肉を使った煮込み料理の作り方を詳しく説明します。
ちなみに野菜の煮こみの僕流の作り方はこちらに書いてます。
煮込みに使うお肉の部位の説明
ではまず煮込み料理に使うお肉の説明をします。
かたまりの豚肉や牛肉を用意して貰うんですが、お肉の部位で若干煮こみ加減や、出来上がりが変わってきます。それを説明します。
煮こみ料理に使われる代表的な部位としては、モモ肉、肩ロース、バラ肉、舌、スネや筋といった部位があります。
どの部位で作っても美味しい煮こみ料理が出来るんですが、モモ肉だと脂分が少ないので、ホロホロとほどけるような肉質に仕上がり、バラ肉だと豚の角煮のようにとろけるような肉質に仕上がります。
肩ロースは適度な脂肪分とどっしりとした肉肉しさがありますので、長時間煮込んでも煮崩れしにくく尚且つ柔らかく仕上がります。お肉の存在感も十分に堪能できますので煮込み料理にオススメの部位です。
また舌は牛タンシチューでお馴染みのしっかりとながら柔らかく仕上がりやすく、牛すじはコラーゲンがゼラチン化してプルプルの柔らかなお肉に仕上がります。
スネは柔らかくなるまで時間はかかりますけど、(柔らかくなっても食感は強め)お肉を食べてる感じが良いですね。
お肉の部位によって食べた時の食感や栄養価が変わりますが、基本的にどれを使っても美味しいのは美味しいです。
ビーフシチューだからこの部位を使わなきゃいけないなんて事はないので、どの部位を使うかは値段や好みで大丈夫です。
ただしお肉が柔らかくなるまでの時間は変わってきます。
時間短縮できる圧力鍋の上手な使い方とお肉の切り方
時短レシピとして圧力鍋を使うのも良いと思います。
僕もお肉を柔らかくする為に使ったりしますが、
圧力鍋で完璧に柔らかくすると旨味が抜けきるような気がするので、時間短縮の補助くらいで使うのがベストだと思います。
軽く圧力かけてからゆっくり煮込む感じですね。これで大幅な時短が出来ます。
ちなみに圧力鍋を使わない方が時間はかかりますが美味しく作れます。
次にお肉をカットして下さい。
お肉を煮込む時のポイントとしてはお肉を大きめにまずカットする事です。
どうしても長時間煮込む事によりお肉は生の状態からはかなり縮むので、思ったより大きめにカットすると良いです。
お肉に下味を付ける
次にお肉に下味をつけるんですが、煮こみ料理には下味をつける場合と付けない場合があるのはご存知ですか?
この理由はそのままなんですけど、下味を付けるかどうかで仕上がりが変わってくるからです。
塩胡椒をするとお肉自体に味が付き、煮こみ料理で長時間煮込んでもお肉を食べた時にお肉の存在感が残ります。
また塩をする事でお肉の余分な水分が抜け旨味を引き出します。
塩胡椒などの下味を付けない場合は、煮込んだ液体にお肉の旨味が流出するのでお肉の存在感は弱くなりますが、美味しいソースが出来上がります。
メリハリは無くなりますけど一体感があるお味になる感じです。
ちなみにフォンなどのお肉の出汁を取るときはお肉に下味をつける事はありません。
では塩胡椒は必須かというとそうでもないです。
西洋料理でお肉を煮込む時は塩胡椒をつける場合がほとんどですけど、和食や中華料理では最初に塩胡椒はあまり使いません。
この違いは僕の推測ですが、中華や和食は砂糖を使う事が多いのでその影響なのかなと思ってます。
塩の分子より砂糖の分子の方が大きいので先に塩を使ってしまうと砂糖の甘みが食材の中に入りにくくなります。
その為砂糖を塩より先に使う必要があります。
ですので下味で塩が使えないわけです。
また和食の煮込みでは塩より醤油で味を付ける事が多いので下味をつけない理由はこういった感じかなと個人的には思ってます。
調味料の入れる順番はこちらで丁寧に説明していますので良かったら見てください。
煮込む前に焼く理由とは
下味の次は事前に焼く作業です。
下味を付けたら次にお肉を焼いてから煮込む場合が多いんですけど、では何故お肉を焼くのかご存知ですか?
その理由とは香ばしく表面を焼く事で風味も旨味もアップするからです。
この時ちょっとした生臭さなんかも取れます。また一旦焼く事で長時間煮込んでも煮崩れしにくくなります。
これが焼き色を付けるように焼く理由です。
表面を焼く事でお肉の旨味の流出が防げるからという考え方もありますが、現代ではその考えはちょっと疑問になってますね。
お肉の塊のソテーでも昔はオーソドックスの焼き方だった最初に表面を強火で焼き固めるより、ゆっくりと火を通した方が旨みが残っているのも常識になってきてます。
実際フォンなどのお肉の出汁を取るときにお肉を焼いてから出汁を取っていくんですけど、焼く事で旨味が出てこないなら出汁を取る過程でお肉の表面を焼いたらダメなはずなんですよ。
けど香ばしく焼いた方がお肉の旨味が出た美味しい出汁が取れます。
しかし旨味の流出がないからとお肉の塊をそのまま焼かずに煮込み料理を作ると、なんだか気の抜けたお肉になります。
うーんどっちなのかな??
流出してるようなしてないような変な感じです。
とりあえず最初に焼き色を付けるように焼く方が美味しいのは間違いないです。
カレーなどに鶏肉を入れる時でも一旦フライパンで黄金色の焼き色が付くまで焼いてから、カレーに入れる事で煮込んでも柔らかくしっとりとした食感になり、尚且つお肉の味がより強く感じられます。
この時の鶏肉に下味を付けて焼くと、より鶏肉の旨味がアップしてます。
また豚の角煮を作る場合だと焼くことによって余分な脂分を取り除くこともできます。
ちなみに豚の角煮は焼いた後甘みを入れて煮込むので、下味は付けません。
そしてこの時のお肉の焼き方なんですけど、強火でガーーって焼かないようにします。弱火で焼くのはお肉を焼く時のポイントです。
急激な加熱による温度変化は水分の蒸発を促しタンパク質を収縮させる為、お肉を硬くしてしまうのと、旨味を引き出す事が出来ません。
じっくり焼く事でアミノ酸が増え旨味がアップするので、弱火で焼き色が付くまで触らずほっておく感じです。
お肉の美味しい焼き方についてはこちらに書いてますので参考にしてみてください。
煮込み料理の場合は中まで火を通す必要はないので、美味しそうな焼き色が付けばOKです。
また後から柔らかくなるまで煮込むのでソテーのようにシビアにじっくりと焼く訳でもないです。弱火は基本ですけど、超弱火じゃなくて大丈夫です。
お肉を焼く前に小麦粉をまぶす理由とは
次にお肉の表面を焼く時に小麦粉をつけるかどうかを説明します。
小麦粉をまぶして焼くのとそのままで焼くのではまた違った出来上がりになります。
僕が豚バラの塊を西洋風の煮込みにする場合は、下味を付けて表面に軽く強力粉をまぶし焼き付けてから長時間煮込みます。
この時に薄力粉や強力粉をうっすらまぶして焼く場合と、そのまま下味を付けて焼く場合との違いはお肉をストレートに表現するかどうかだと僕は思ってます。
まずお肉の表面にうっすらと粉をまぶしてから焼く事でより強力な膜ができ、お肉の旨味を閉じ込めたまま調理ができ尚且つ水分の流出を防ぐので柔らかく仕上がります。
しかしお肉の表面に小麦粉の膜があるのでお肉本来の食感ではなく、煮こみ料理の場合はソースが良く絡んだしっとりとした食感になります。
逆に粉を使わずに表面を焼き固めて煮込んだ場合は、お肉の水分の流出は少ししてしまうんですが、お肉本来の食感を損なわずにすみます。そしてクリアな味に仕上がります。
ちなみに古典的なフランス料理は小麦粉をまぶしてから作る事が多いです。
この違いを分かりやすくいうと、小麦粉を使わないとラーメンのチャーシューみたいにパサつきながらも肉肉しい食感に仕上がり、小麦粉を使うとビーフシチューの中にあるお肉のように柔らかくジューシーな仕上がりになります。
チャーシューは豚もも肉を使う事が多くビーフシチューじゃ牛ももや牛肩ロースを使う事が多いのでちょっと違いはあるんですけどそんな感じです。
ちなみに豚バラ肉を小麦粉を使わず煮込む料理といえば豚の角煮になりますけど、柔らかく煮込むと、しっとりはしてるけど少しパサつきがあり尚且つ肉肉しさもあるお肉本来の食感が分かる状態だと思います。そして煮汁もクリアな透き通った味です。
小麦粉を使った煮込みも使わない煮込みもどちらの料理も美味しいですよね。
ちなみに小麦粉を使って長時間煮込む場合は鍋底が焦げやすくなる事と、液体に軽く濃度が付きます。焦げないように気をつけてください。
またラーメン屋さんのチャーシューを作る時に小麦粉を使わない理由のひとつとして、そのチャーシューの煮汁をラーメンの調味料として使う場合があります。
チャーハンにもその煮汁を使うお店もあります。
その時に小麦粉の粘りは邪魔になりますし、お肉を煮込んだタレは何度も継ぎ足して使う事でうなぎ屋さんのタレのように美味しくなります。(継ぎ足して使うかはお店によります)
小麦粉をまぶしてお肉を焼く説明はこんな感じです。
煮込むときに最適な温度管理
これでようやくお肉を煮込む準備が出来ました。
あとはお好みのスープや調味料の中で煮込んでいけば柔らかくなっていくんですが、煮込む時の温度によって仕上がりはまた変わってきます。
温度が高い状態で火を通していくと、お肉の中の水分が外に流出していきやすいので、旨味が抜けてパサパサに仕上がりやすいです。
ですがあまりに温度が低いとお肉は柔らかくならないのと液体の水分が蒸発せず味が詰まっていかないので、美味しい煮込み料理になりません。
この時フタをしないのも大事です。フタをする事で鍋の中の温度は急激に上昇しますのでお肉から水分が抜けぎゅっと硬くなります。また液体が煮詰まっていきません。
特にスネやスジなどの硬い部分は、コラーゲンがゼラチン化する事で柔らかくなっていくので最低でも80度くらいの温度が必要です。
ちなみに煮込み料理の適切な温度帯は75度から90度と言われています。
100度に近くなればなるほどお肉から旨味が抜けスカスカになります。
120度くらいのオーブンで煮込み料理を作ると鍋の中の温度は80度前後にキープできるのでオーブンを使うのもおすすめです。(オーブンの大きさと使う鍋の大きさ、水分量によって鍋の中の温度は変わります)
僕がお肉の煮込み料理を作る時は低温でゆっくりと長時間火を通して柔らかくし、お肉が柔らかくなったら一旦取り出して、煮込んだ液体を煮詰めて味を整えてその煮詰めたソースにお肉を戻し仕上げるといった工程をします。
お肉を柔らかくしつつ、ソースもしっかりと煮詰め一皿の中でも一体感がありつつコントラストが出るのが僕の理想です。
鍋の中にお肉がある状態で液体を煮詰めていこうとすると、どうしても高温になってしまうのでお肉の旨味が流出してしまいます。
煮込み時間はお肉を柔らかくするんですけど、時間と共にお肉の旨味を液体に流出させてるんですね、その為に低温で煮込む事が大事なんですけど、そうすると液体の旨味が詰まっていきません。
ですのでお肉を柔らかくしたら、一旦取り出して液体だけを煮詰めて旨味も詰めてあげるとお肉もスープも美味しく出来上がります。
この工程をするもう一つの理由はずっとおなじ鍋で煮込んでいくとどこを食べても同じ味になってしまうのを避ける為です。
食材を別々で火を通しておく事で素材の味が残ります。そして最後に軽く煮込むだけでも十分に美味しい煮込み料理はできます。
お肉と野菜を一緒に煮込む、カレーやシチューなんかも野菜は野菜で火をとしてお肉はお肉で火を通して後で合わせて軽く煮込む作り方も食材の味が際立ち美味しいですよ。
僕的には出来るだけ食材ひとつひとつの個性が分かるように、それでいて一体感があると良いですね。
と余談でしたが、何気なく作る煮込み料理も科学的に考えるとより一層美味しく作れます。
あとがき
お肉の煮込み料理は手間がかかる料理ですが、基本的には長時間煮込めば柔らかく美味しくなりますので、やってみようかなと思ったらこのページを参考にしてみてください。
塊のお肉を赤ワインで一晩漬け込んで作る方法なんかも今度紹介します。
失敗しても挑戦する事に意味がありますので、とりあえずやってみましょう。
煮込み料理の味付けに関しては今回何も書いてませんけど、基本的には少しづつ味を重ねていくイメージが良いです。
というのも煮込んでいくうちに水分が無くなり味が濃ゆくなりますので、最初から美味しい味付けで煮込むより薄味からスタートで大丈夫です。それにお肉が柔らかくなってから調味料を入れていく方が、お肉は硬くなりにくいです。また鍋底も焦げにくいです。
冷めていく時に味は食材に入りますので、作って置いたものを温め直すのも美味しい煮込み料理の秘訣です。
あと煮詰まってきたらお水を足してもらえればOKです。
少しでも参考にしてもらえると嬉しいです。
あなたの料理が上手になるお手伝いができれば幸いです。